退職理由の書き方と例文
ここでは転職に役立つ退職理由の書き方と例文を説明します。退職理由は志望動機と対をなします。採用担当者は、なぜ勤め先を辞めて転職しようとしているのか、大変気になるものです。特に「自己都合」による退職で、同業界や同業種への転職希望の場合、わざわざ転職する理由は何なのかを知りたがります。勤続を継続できない何らかのトラブルがあったのではないか、定着性がないのではなどと疑われることもあります。その不安を払しょくさせるだけの退職理由を書く必要があります。
前向きな退職理由の書き方
転職は、何かしら会社に対して不満あるからするものです。不満がなければ、「転職しよう」という気持ちにはならないでしょう。
しかし、退職理由の書き方に注意が必要です。以下のような退職理由は敬遠され、前職場に対する批判とされます。
敬遠される退職理由の例
- 残業が多かったから。
- 移動先が希望しない部署だったから。
- 人間関係が悪かったから。
- 上司にに不満があったから。
理由はどうあれ、前向きな姿勢をアピールできる内容にする必要があります。
では、どのように書けば前向きな退職理由になるのか?それは、新しい職場で実現したいこと、実現できることに照準を合わせた転職であることが伝わる内容を記入することです。そのように書けば、志望動機にもつながり、前向きな退職理由を伝えることができます。
ポジティブな退職理由を書くための方法
以下の3点を中心にまとめてみましょう。
- 応募先の職場で実現したいことは何か?
- 応募先の企業で実現できることは何か?
- 実現したいことや実現できることに対してどのように取り組んできたか?または、取り組もうとしているか?
「こういうことがやりたいから退職した」、また「こういうことができるから退職した」と書けば、応募先で「こういうこができるから(やりたいから)志望した」となり、志望動機にも直結して好印象を与えます。
不採用になる退職理由、採用される退職理由の例文
ネガティブな退職理由とポジティブな退職理由の例文を紹介します。
ネガティブな退職理由
日常的に業務が非常に多忙で、社内の雰囲気が良くないのが不満でした。退職者が後を絶たないような状況に将来に不安を感じ、このたび退職を決意いたしました。セキュリティ関係の仕事に就きたかったため、「情報セキュリティスペシャリスト試験」の合格を機に、退職を決意いたしました。
ポジティブな退職理由
以前からセキュリティに関する知識を深めたく思い、残業が多い中、独学で勉強し、20XX年X月に「情報セキュリティスペシャリスト試験」に合格することができました。今後は、現場でセキュリティ技術を身に付け、向上させたいと思い、転職を決意いたしました。
「残業が多い中、独学で勉強し・・・」はバイタリティや向上心の強さをアピールしています。「今後は・・・向上させたいと思い」と書くことでポジティブな退職理由になっています。
前向きな退職理由が見つからないときの書き方
実際、退職理由として「残業が多すぎる」、「上司や同僚との人間関係がうまくいかない」、「給料が安すぎる」、「会社の将来性に不安を感じた」などの理由で転職することは本音としてありえることです。しかし、それを正直に書いていては単なる会社批判になってしまい、書類審査に通るのが難しくなります。
自分の価値を見つけアピールする
ではどうすればいいのか?
それは、自分自身を見つめなおし、自分にはどこに価値があるのかを見つけ、その価値をうまくアピールすることです。まずは、退職(転職)を決意した理由を書き出してみることです。
以下に例を示します。
- 残業が多すぎる
- 上司とかみ合わない
- 新しいアイデアを出すのが好き
- 給料が安い
- ものづくりに興味がある
上記の退職(転職)理由のうち、1、2、4は理由として弱く、採用側からは敬遠される退職理由です。1が理由の場合、「残業が多くなるとまた辞めるかもしれない」、2が理由の場合、「上司や同僚とそりが合わなかったらまた辞めるかもしれない」、4が理由の場合、「業績が悪くなり賞与が払えなかったりするとまた辞めるかもしれない」と採用側は思ってしまいます。
1、2、4は外し、志望動機につながる3と5に絞り退職理由を考えてみましょう。
前向きな退職理由の例文
前職では、コンピューターソフトを販売する営業職でしたが、完成した商品を販売するのではなく、(1)持ち前の発想力を活かし、(2)自らが一から新しいものを企画し商品化する仕事に従事したく思い転職しました。
(1)持ち前の発想力を活かし
商品企画で求められる発想力があることをアピールしています。
(2)自らが新しいものを企画し商品化する仕事に従事したく思い
前向きな気持ちが伝わります。大切なのは「これから何をしたいか」です。その前向きな気持ちを伝えながら、「○○をしたいから退職を決意した」と書くと、志望動機にもつなげることができます。
ネガティブな理由以外見つからないとき
何か一つでもポジティブな退職理由が見つかればそれを書けばよいのですが、どうしてもネガティブな理由しか見つからない場合もあるでしょう。
その場合は、あえて履歴書や職務経歴書には退職理由は書かないことをおすすめします。書くことでかえって言い訳がましく見えてしまう可能性もあります。
私自身が採用担当を務めた経験から言えば、履歴書に退職理由を明確に書いている応募者のほうが少ないです。退職理由が書かれていないという理由だけで書類審査で落とされることはあまり考えられません。
気になる応募者がいれば、書類選考は通し、面接で聞こうとするものです。詳細な退職理由については、応募書類が通ったあとの面接で伝えるのも一つの手法です。
ただし、正当な退職理由があるならば、疑念を払しょくするためにも、履歴書にしっかりと退職理由は書くべきです。
では、面接ではどう伝えればいいのか?他に理由が見つからないならば、正直な理由を伝えるしかありませんが、単に「残業が多かったから」や「人間関係がうまく築けなかった」ではなく、それによって辞めざるを得なくなった理由まできちんと伝え、採用担当者に納得してもらうことが重要です。
以下に退職理由の例文を示します。
残業が多くてやめた場合の退職理由の例文
スキルをさらに伸ばすために○○○資格取得に向けての勉強を試みましたが、(1)残業によって帰宅が明け方近くになることが日常的で、休日もほとんど取れない状況であったため、勉強の時間が満足に確保できませんでした。
あくまで業務が最優先ですが、(2)今後、自分自身のスキルを高め能力を伸ばしていくためには日常の業務のほかにも自ら勉強していくことも必要だと痛感していました。○○○資格取得に向けて勉強の時間を確保したく思い、退職いたしました。
(1)「残業によって帰宅が明け方近くになることが日常的で〜勉強の時間が満足に確保できませんでした」
一時的に業務が多忙なのではなく日常的であるがゆえに、時間を確保するためには辞めざるを得なかった、ということになります。
(2)「今後、自分自身のスキルを高め能力を伸ばしていくためには〜確保したく思い、退職いたしました」
自己啓発を積極的に行おうとする姿勢がうかがえ、好感が持てます。
職場の人間関係が悪くて退職した場合の退職理由の例文
チームワークを大切にし、目標達成に向かってお互いが協力しあい努力していける職場環境を求めて退職を決意いたしました。
転職回数が多い場合の退職理由の書き方
転職回数が多いと、採用側は「またすぐに辞めるのではないか」、「人間関係をうまく築けないのでは」などと心配してしまうものです。まずはそのような心配を払拭させることが必要です。
転職を繰り返したのは、「スキルアップのため」、「やりたいことがあったが、その会社では実現できなかった」、「やりがいのある仕事にめぐり合えなかった」など前向きな退職であったことを示す必要があります。そして、転職はこれが最後であることを強調しましょう。
採用側が納得する退職理由を書いた上で、「転職回数が多い場合の志望動機と例文」でも書いたとおり「好奇心が旺盛で関心の幅が広い」、「幅広い経験と知識による複合的な見方ができる」、「バイタリティーがある」などをアピールしてマイナスイメージをプラスに変えましょう。
倒産やリストラで退職したときの退職理由の書き方
リストラで会社を辞めた場合は、「会社都合により退職」と記入します。倒産の場合も、「会社都合により退職」あるいは「倒産により退職」でよいでしょう。
倒産・リストラの場合の退職理由の例文1
倒産により退職
ただし「会社都合」の場合、懲戒免職や諭旨解雇など幅広い意味を含んでいますので注意が必要です。所属部署の閉鎖など、人選でリストラ対象になったわけではない場合は、その旨を記入したほうがよいです。
倒産・リストラの場合の退職理由の例文2
会社都合(所属部署の閉鎖のため)により退職。
業績不振で退職者を募るために行われたりする「早期退職優遇制度」で退職する場合は、それを退職理由にすることができます。
倒産・リストラの場合の退職理由の例文3
長期にわたって会社の業績が低迷していたため、将来のことを考え、早期退職優遇制度を利用して退職することを決意いたしました。
ただし、早期退職優遇制度は退職のきっかけに過ぎないため、厳密な意味においては、退職理由にはなりません。
解雇されたわけではなく、「早期退職優遇制度に対して自ら手を挙げた」わけですから限りなく自己都合に近いとも言えるでしょう。
面接まで進むと必ず「では、なぜ退職しようとしたのか?」と質問されます。志望動機につながる退職理由を準備しておく必要があります。
いずれの場合でも前向きな気持ちも同時に伝えることが必要です。採用側にとって、応募者の過去のことよりも、現在持っているスキル・経験をどのように活かしていこうとしているのか、ということのほうに重点を置きます。
長期療養で退職したときの退職理由の書き方
長期療養で退職したときの退職理由としては「病気療養のため」となります。理由は正直に書きましょう。長期間にわたるブランクは、やはり大きなハンデになってしまいます。しかし、その期間をいかに過ごすかでマイナスの印象を最小限にとどめることができます。
「資格取得に向けて勉強していた」や「専門書を読んで勉強していた」とアピールすれば、長期療養によるブランクのハンデを挽回することができます。アピールするほかに、「健康状態」記入欄で「良好」と書いた上で、「現在は完治し、業務の支障は全くなし」と補足するとよいでしょう。
長期療養の場合の退職理由の例文
病気療養のため。
※1年間にわたって自宅療養していましたが、その間に簿記検定1級取得に向けて勉強していました。10月に行われる簿記検定に受験する予定です。